2011年

8月

31日

ジオラマをパースで作る

 未来の3Dソフトが、雰囲気をも自在に操って、情感豊かなパースを作るようになっても、建築模型の臨場感にはかなわない。

 最近、3Dの映画が流行るのは、横や奥行きの無限の広がりの空間に自身を置き、ドラマと一体化する臨場感の楽しみだと思う。もちろん,錯覚ではあるのだが。超リアルなパースやどんなに迫力満点の大画面ムービーでも、そのイメージはできても体感(臨場感を楽しむ)には至らない。

 

 模型は、優しい体感だ。3Dの映画は半ば,強制的な体感であるが、模型は、お気に召すままとその体感を自由にしてくれるのがいい。

 

 ジオラマは模型の集大成である。

 ジオラマは模型に風景や季節や時代を加えるわけだから、模型以上に、もっと豊かな感動を与えてくれる。

 

 掲載するパースは某植物園を俯瞰した景観である。

 この作品は手描きと,レタッチワークで制作されたものである。

 3Dレンダリングソフトは一切使われていない。

 オリジナルの大きさはA2サイズであるから、添景の人物の大きさは6㎜、車は12㎜、建物は30㎜程度で描かれている。そのディテールや表情は,俯瞰の角度も幸いして?分かりにくい。

 

 これらの植栽や樹木の一つ一つを3Dで仕上げることになると、気の遠くなるような労力と数ギガのデータ容量を費やすことになったであろう。

 

 ここでの樹木や植栽は、それらの2Dの写真を使って、足下を重ねながらリピートしている。建物や設備は15倍程度に拡大して別途描き上げ、画面上で、また縮小して貼付けた。

大きくするとディテールも描きやすいし、思い切り描ける。縮小すると、せっかくの部分がつぶれてしまうことが多いが、その自然なアバウトさが、いっそうリアリティを増す。

 

 全体に配慮する大事な技術はエッジングとスケール比である。

エッジンッグは,描いたオプジェを周りに違和感無く、なじませるため、その縁取りのぼかしとトーンの調整である。

 スケール比は俯瞰した時のオプジェの高さや、傾斜、大きさが常に正確な縮小値で描かれることである。この絵はちょっと変だな、感じるものは,スケール比が間違ってることが多いので、決しておろそかに出来ない。

 

 制作中は何やらジオラマを作っている楽しい気分であった。

 確かに,仕上がってみると,ジオラマを「描いて」作り上げたみたいだ。

 

 手描きの手法は正解だった。

 

植物園
植物園
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