2011年

4月

26日

知事の犯罪

昨夜,もう朝になってたが、「知事抹殺」を読み終えた.平成20年、福島汚職事件で有罪判決となった、元福島県知事、佐藤栄佐久著による、事件の全貌である。深刻な被害をもたらしている福島の原発事故を見守る中で、この事件がふと思い出され、もっと詳しく知りたい気持ちが,この本に巡り会わせた。

そこには原発の安全性や検事でつくられる疑惑のストーリーが自らの体験で述べられている。ぼくはその問題提起は未だに進行中でなに一つ解決がついてないことにあらためて驚かされた。

原子力委員会の絶大な権力や原子力安全・保安院の形だけの仕事ぶりや原発会社の地元を軽んじる傲慢さは枚挙にいとまがないほどここに描かれている。

10年も前から、たびたび東電の事故隠し、報告データねつ造が行われていたことを知ると、今回の事故が天災ではなく、起こるべくして起こった人災ではないかと思えるほどだ。そして、知事職にあった作者自らが原発全基停止に向けての闘いが克明に記されている。しかし、結局は、地元では太刀打ち出来ない巨大な壁の存在を知ることとなる。政府や内閣府や原子力推進派は聞く耳をもたずに何でも出来るのだ。外部に見えない事故の報告やその対策は逐次東電から行政府に届いてたはずだ。彼らはその報告の公開、非公開のさじ加減をどのようにもできたにちがいない。今回の事故では隠しようがなかったが。事故の影響を最も受ける地元には、どんな危険な報告でも、中央の決定を待って、それから各局を経由し、後回しで一番最後になるのである。そのシステムは未だに変わってなかった。

作者が福島県知事として10数年、政府と対決する姿勢は、中央行政側に大きな敵を作り,彼らの知事憎しに拍車をかけたことは想像に難くない。

 

地元の絶大な支持を得て第518年の長きに渡る作者の県政は20069月に県発注のダム工事をめぐる汚職事件で逮捕される。談合で業者を決める際に指示する「天の声」を作者が発したとして有罪となる。部下であった土木部長の証言がその証拠となるのだが。「天の声」を告げたと言う作者と土木部長の会見は当日の知事室秘書の記録に無いことであったが…。

判決は執行猶予のついた3年の刑。出処不明の2600万円をタンス預金をしているような土木部長の証言は疑惑に満ちるもので、知事を抹殺したいと言う検事のストーリーが画策したのではとも推理できる。

 

ぼくははこの本を読み終えて,政治家をどのように評価すればいいのか,その価値をどの物差しで測るのか、しばし考えてみた。

清濁合わせ呑む度量が無いと政治はやれないだろうし、叩けば.一つや二つの埃が出るのが政治家だろうと思っている.とすれば、本人の人格より、政治でなし得た業績で評価すべきでは。ビジョンを持ちカリスマ性のある政治家ほど皮肉なことに、晩節を汚す運命に遭うようだ。例えば,田中角栄。ロッキード事件で有罪となる判決に、どれだけ悔しい思いをしただろう、その時の彼の無念さは他人ではとても量れない気がする。それは、政治で為すことの,たとえエゴイズムであろうと、彼のその夢を断つことであったから。

くらべるに、

阪神大震災時の村山富市

沖縄基地問題での鳩山由紀夫

2人の総理は何事もしなかったゆえ、罪が深い。

 

 

4 コメント